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曲がり角を曲がろうとした。
いつもと同じように。
だけどそれは叶わなかった。
ドンっと何かに真正面からぶつかり、私はそのまま転んでしまった。
「いったー…。なに?」
そう言って見上げれば、背の高い男子が立っていた。
「ごめん!大丈夫か?」
そう言って手を差し伸べてくれた。
私と同い年ぐらいの、短髪でちょっと硬派な顔立ちの男子だった。
「あ、うん。だ、大丈夫。…こっちこそごめん。」
私はその手を遠慮しながらも掴んだ。
私なんかよりも全然大きくて、少しひんやりとした手だった。
「よいしょ。…ありがとう。」
お礼を言えば、彼はおう。とだけ言い、私のことをじっと見つめてきた。
「…あー。あの、どうか、した…?」
「………やっぱ分んねぇよな」
「は…?」
思ってもみない言葉に訳がわから
なかった。
「まー。そらそうか。10年ぶりだし。俺だよ渚。」
渚。私の名前だ。
私のことを渚、なんて呼ぶのは家族、それに友達ぐらい。もちろん女子の。
男子に呼び捨てなんてされたことがない。
たった1人を除いて。
「え…。うそ…。なつ…き?」
「あたり。久しぶりだな。」
そう言って、微かに目を細めて笑った。
そしてこの時、私のミライは変わった。
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