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空は赤く映っていた。
燃えるように赤く、焼けるように熱い茜色とはまた違う天。それは夕焼けの様ではなく、本当に真っ赤に地上が火を揺らめかせているのを投影していたのだ。
火の粉が舞い、焦げ臭く、爆発音が止まないそこは正に地獄絵図。
戦場だ。
その一角のビルで対峙する二人がいた。
「……とうとう終焉だ」
片方の人物が邪悪な笑みを浮かべながら口を開く。
とても愉快に果てしなく広がる火の海の光景を眺めながら――
世界そのものを憎んでいるようにさえ、否、憎んでいるのだ。
「もうこの滅亡を止められはしない。中途半端に止めればいつまでも尾を引くだろう。ならひたすら滅び尽くせば良いのだ」
それでも――とその人物は一旦区切り、この場にいるもう一人の人物に視線を合わせる。
不愉快そうで、悲し気な表情で。
「……お前は私の邪魔をするのか?」
「うん。私はあなたを止める」
逆らえば軽く殺められそうな程の狂気を纏う相手に対してその人物は怖じ気付く事もなく、真っ直ぐに相手を見据える。
女性であった。
いや、少女だ。
まだこんな場所に立つには早いくらいの――
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