第3章

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頭上に広がる満開の桜は、 夜の闇の中で見ると、 どことなく妖艶な薄墨色をして 果てなく続いている。 見上げて考えごとをしながら なんとなく歩くうちに、 美和はすっかり戻る道を 失ってしまった。 花見の宴はそこらじゅうで行われ、 街灯や提灯のわずかな明かりは 頼りにならず、 暗がりの中ではどの酔った顔も、 騒ぐ声も、同じように感じて、 なんの目印も覚えずに歩き出したことを、 後悔することになった。 さっき使ったトイレに戻ろうとするのだけど、 それすらもう、わからなくなってしまった。 せめて携帯をもってくればよかった。 我ながら、情けない。 美和はすっかり途方にくれて、立ちすくんだ。
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