第3章

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「迷子になったんですか?」 その時、突然背中から男性に声をかけられた。 「わっ」 不意をつかれて、驚きのあまり、 美和は思わずその場にしゃがみこむ。 「ごめん、驚いた? 大丈夫?」 柴田があわてて駆け寄り、 膝を折って美和の顔をのぞきこんだ。 「もー。心臓に悪いー……」 美和はしゃがみこんだまま、 柴田をにらむ。 「スミマセン」 柴田は恐縮した後、反撃に出る。 「でも、こっちも、かなり探したんですケド」 柴田は美和の腕をつかんで助け起こした。 「ごめん」 「酔ってる?」 「すこし。でも、もう醒めたと、思う……」 美和は、反省した表情で、 背の高い柴田の顔を見上げた。 「私、戻らなきゃ。荷物、置きっぱなし……」 「これのこと?」 柴田が茶色いバッグを掲げて、 左右に振って見せた。 「あ! それ!」 「どうぞ」 「ありがと」 美和は頬を赤らめて、 低姿勢でバッグを受け取る。 柴田はニコニコして、 「あー、見つかってよかった!」 と笑った。 私、何してるんだろ。もー。 またしても、自己嫌悪である。 いいとこないなあー。 「美和さん。食事に付き合ってもらってもいい? おれ、まだ腹へってて」 「あ、そうだよね。いいよ」 柴田の提案に美和がうなずいた時、 柴田の携帯電話が鳴った。 「あ、ごめん。ちょっと待って」 柴田は美和に断って コートのポケットから電話をつかんで出た。 「はい、柴田です」
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