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乾杯をしてワインを一口飲んだ後、谷さんがケーキを切る間に、模型の仕上がりを中西さんがチェックする。
「ふーん」
屋根をはずして家の中を厳しい眼差しで隅々まで覗き込みながら、中西さんは細かく頷いた。
中西さんの口から極上の誉め言葉を聞いたことはない。二十代からこの個人事務所を経営し、今、四十代に入ったばかりの働き盛りの建築家は一切、妥協を許さない。
前回作った模型では、芝の生え方が不自然だとか、壁紙が曲がっている(ほんの少し斜めだった程度)、という理由で、やり直しを命じられた。
この反応がどのくらいのレベルに相当するのかわからなくて、私は息を詰めてその横顔を見守る。
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