6.過去(5) 2000年12月31日

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その時、どこからともなく、十五、十四、と小波のようにカウントダウンの声が周囲に広がり出した。 「十、九、八……」 私たちも顔を見合わせてそれに合わせて数え出す。 「五、四、三、二、一!」 「あけましておめでとうございまーす」 私たちは歓声と拍手で新年を祝った。 「21世紀もよろしく」 麻美と握手をした後、冷たく暗い冬の夜空を見上げて祈る。 私たちの痛みと決断は無意味ではなかったといつか思える日が来ますように。今日という日が明るい未来に続きますように。 「これから参拝をはじめますが、危険ですので走らずゆっくり前に進んでください」 人の頭の波の向こうで、本殿の入り口の大きな木の扉がゆっくりと開くのが見えた。
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