第1章

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人々に希望を与えるために自身の希望を捨て、生きていく。 そんな人生に一体なんの意味があるというのだろう。 誰かの幸せより自身の幸せの方が大切だと思うのはいけないことなのだろうか。 人々のために生きることを強要され、そのためだけに生きていく生活なんて嫌だと何度も逃げようとした。 だが今まで一度も成功していない。 もしも迎えに来てくれる人がいたのならばどれだけ良かっただろうか。 彼ならば来てくれるのではないかと待っていたが、彼が来たことは一度もない。 逃げだせない、攫ってもらうこともない、ならば諦めるしかないのだろうか。 嫌だ。 確かに外の世界は悲しいこと、汚いことがたくさんある。 それでも外で生きたい。 自由な外の世界なら心の底から笑うことができそうで。 その日は普段使用している部屋の手入れをするらしく別の部屋で眠りについた。 朝日が昇り眩しい光が部屋に射し込んできた。 陽の光の眩しさに涙を流した。 何故だかは分からない。 久々に流した涙は生きているのだと実感させてくれた。 すると外から誰かの話し声が聞こえてきた。 ここでは滅多に聞かない男性の声だった。 知らない声なのに何故か懐かしく感じた。 ようやく彼が迎えに来てくれたのだと知るのはもう少しあとのことだった。
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