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「んぎゃあ…んぎゃあ…」
「ようこそ、俺の赤ちゃん。あ、男の子だ。すごく可愛い♪」
既に今にも途切れそうな呼吸の彰の、今は原形すらわからない摂取され脆くなった砕けた骨と、血とわずかな肉塊の腹があったあたりから、円は躊躇することなく血まみれで臍の緒がついたままの赤ん坊を抱き上げ愛おし気に頬擦りした。
「よかった…彰に似てる…ふふふ」
円は顔や体についた血を気にすることなく、鼻唄を歌いながら血でベタベタの手を楽しげにポケットに入れ、携帯を出しボタンを押した。
「こちらⅢ-14159、地球名“円(まどか)”任務完了。これより本船に戻ります。
母体Deleteよろしくお願いします」
携帯を切ってすぐ、眩しい光に辺り一面包まれ、時計の針が止まった。
「さあ、行こう。君の名前は…“彰”だよ」
円は赤ん坊を抱く手に力を込め、胎盤をつけた臍の緒を引きずりながら、降りてきた何かにDeleteされていく、もう生きているのかどうかさえわからない彰を見下ろし微笑んだ。
○おわり○
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