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「俺だってこんな話、簡単には認められないことくらいは百も承知だ」
彰はノートの次のページを開き、ボールペンを指で器用にクルクルと回した。
「なかなか面白いとは思うけど、彰がそう思った根拠って?」
円は先程までのチャラけた顔から、複雑な表情で彰に問う。
「これは俺の仮説でまだまだ勘なんだが…。まず、自分達の仲間を“赤子”として地球に送り込むんだ。世界中各地にな。そして中に入る。その先は最初目についた場所だったかもしれない。それが、竹であったり桃や瓜や花なんだ」
彰はグリグリとノートの隅の空白部分にペンで何重にも意味のない円を書きながら続けた。
「母体となる人間の女性にうまく潜り込めた者もいる。その場合は年齢を無視してな。だから年老いた夫婦にいきなり子どもが授かったりしたんだ。当時は子どもが生まれること以外、母体となる場所は問題視していない んだ」
「どうして?」
「大きさだって小さいだろ?それは みんなどこへでも入り込みやすいよう、小さいサイズなんだと思うんだ。時としてタニシに入り込み、そのまま母となる母体へと移行した強者がタニシ長者だったんじゃないかと」
円は驚いたように目を見開き彰を見る。
彰だって自分で無茶な説を考えて、『何を得意気になって』と客観的に見ている別の自分の気持ちもあるにはあるが、今は衝動に突き動かされる方が強い。
「それじゃあ、彰の言う“その当時”以降は?」
「アブダクションを主にしているんではないかと」
「アブダクション?」
円は首をかしげ怪訝な顔で彰を見た。
「誘拐(アブダクション)だ。 UFOの中に誘拐されて、医学的手術を受けることや、小さいト ランスミッション(発信機)を埋め込まれることもあるらしい」
彰は誰に聞かれてまずいと言うこともないのに、急にボリュームを落とし低い声で語る。
円は声も出さず、じっと彰の目を見て黙って聞いていた。
「中には『実験や研究の対象となった』と言う証言や、『性行為の対象となった』と言う報告もあるらしい。ただ残念なことは、宇宙人の存在を裏付ける物的証拠が示されていないらしいんだ」
彰はノートに目を落とし、さらに次のページをめくった。
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