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「宇宙人の目撃は遥か昔からあるようだが、俺は彼等は長い間“観察 ”を続けていたんだと思う。トランスミッションの代わりに“赤子”を使って。具体的なデータの回収場面を記しているのが“竹取物語”ではないかと…」
「それじゃあ、月の都の使者って言うのは…」
「ああ、物語では“天人”や“月の都の人”と表現されているが、“月”=宇宙とひとくくりにしていたのではないかと。そして、かぐや姫はUFOに乗せられ回収された」
彰は残りの水を全て飲み干し、下を向く。
「その頃の宇宙人はほとんど温厚で、世界各地でそんな活動をしていた。そして何十年、何百年も繰返しているうちに、より効率的なデータ回収方法に行き着いた。…それが近年のアブダクションによるトランスミッションの埋め込み」
そこまで言い気持ちが落ち着いたのか『ふーっ』と長い息吐き、彰は顔を上げ円を見た。
円は彰の想像もしない、冷たいほどの無表情と言っていいような顔で彰を見ている。
くるくるよく変わる豊かな表情の円の初めて見る顔だ。
「続けて」
声もいつもの明るい声の円にしては、抑揚のない声を発し促してくる。
「お…面白いのか?」
「すごく面白いよ。早く続きが聞きたい」
ニッコリ笑う顔に違和感を感じながらも彰は続けた。
「彼等の中には、地球人女性に子どもを生ませるケースもあるらしく、宇宙人との混血児だって存在していると聞く。そうなると、話を戻すが、先程言った“人から生まれない人”が“人から生まれる人”に変わったんじゃないかと」
「へえ…それで?」
「うん。確実に“人”に近づける為に母体を拐った女性に。そして、今までのデータからサイズが小さ過ぎた為に逆に余計目立ってしまっていたことを反省し、新たな“努力”をした」
「努力?」
目を細めた円にドキリとしながらも、彰はノートをまためくり今度は円に見えるようクルリと回転させた。
「拐ってきた女性に…そのなんだ」
「“子ども”を仕込む?」
「げ、下品な言い方するな。そりゃあそれだけど…つまり、以前のデータ回収用の小さい赤子ではなく、女性の子宮内に直接受精卵もしくは、精子的なものを入れた。それから元の場所に返す」
彰のノートには、UFOへ吸い込まれ再び戻されることを表したような矢印と棒人形と、下手なUFOの絵が描かれている。
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