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「言いやす!」
顔を真っ赤にしながら、土方を押しのける。にっ、と笑った土方が沖田の腕を掴み部屋へと引き込んだ。
「で?何考えてたんだよ」
日が陰り、薄暗い部屋の中で土方が言う。少し口元が緩んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
「土方さん、は、俺のこと…」
今にも消えそうなか細い声で切り出した。
「好きですかィ…?」
その言葉に土方は目を丸くした。
「は?何だって?」
思わず聞き返してしまった。
あまりにも突拍子のない言葉だったから。
「好きでもねーやつにこんなに構わねえだろ」
馬鹿か、と一言。
「俺は、土方さんのこと、」
今なら言えるかもしれない、そう思った。顔が熱い。
日が陰っているから、きっと見えないだろう。
「好…」
腕を引かれ、すっぽりと抱きしめられた。心臓の音が聞こえる。
(心臓、うるさい)
この音は自分の心臓か、それとも。
「土方さん、好…」
言おうとした言葉は、土方の唇に飲み込まれた。
優しく重ねた唇から、土方の気持が伝わってくるようだった。
「分かってる」
長い沈黙のあと、土方は言った。
「え?」
「お前が、俺を好きなのなんざ、顔に書いてある」
暗い部屋で、心臓の音だけが聞こえた。
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