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「冗談やめてよ! これが文学? エロサイトでしょ! こんな宣伝文句、まともな出版社なら書かないわよ!」
「えっ? なに? 宣伝文句? いや、違うんだ! 宣伝は宣伝として……それは、いつもの事で……だけど、投稿作品の中身は違うんだ!」
男子学生は慌てている。
「何が違うの? この宣伝文句を見れば、このサイトが、どんな作品を要求してるか分かるわよ。悪いけど、あなたとは趣味が合わないみたい。さよならっ!」
彼女は、それだけ言うと足早に食堂を出て行ってしまった。
宣伝文句? 僕は宣伝文に着目しながらもう一度、画面を確認してみた。
◆無料恋愛ゲーム
【あの坂本龍馬と甘い恋に溺れたい貴女へ】ん…
◆ぎゅ ぐい がばっ ちゅ
「声、我慢するなよ」
スタジオの隅でそんなこと…
【イケメン俳優と脚本家のイケない関係】
◆結婚前夜に…モトカレが
グググ…
もう昔の俺は、いないから…
◆稽古中に後ろから…
ちょ !? どこ触って…
◆跡継ぎのこと そろそろ考えようぜ
あっ 王子に……
◆結婚前夜に…
キス…した仲だろ?
グイッ
◆このおっぱいがすごい!
青春真っ盛り!『おっぱい部』って何?
ドンッ
愛と友情とおっぱいをあなたに!
なるほど。彼女の言う通りだ。この宣伝文句を読む限り、まともではない。陽気な変態の巣窟なのだろうか?
投稿サイトだが、文芸サイトとは言えまい。明らかに偏っている。
最早【スキ者くらぶ】と呼ぶべきだろう。
残された男子学生は、ポカーンとして彼女の後ろ姿を見送っている。何故、彼女がこれほどに激怒したか、その理由が分からないようだ。
つまりは、感覚が麻痺しているのだろう。物書きとしては鈍感過ぎる。
不意に本を読みたくなった。
僕は、スマホをポケットに入れ、図書館へ足を向けた。
―了―
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