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「結花さんでしたね?」
フルーツパフェが無くなりかけたところを見計らって、マスターは学生に声をかけた。
「はい、立原結花です」
「お酒を飲める年齢ですか?」
「ええ、二十歳になりました。そんなには飲めませんけど」
マスターは巧みな話術で年齢を確かめた。
「では短編小説集の古典の中から、特に有名な話を紹介しましょうか。もしかすると高校で習ったかも知れません。この小説集のタイトルを当ててみて下さい」
マスターは、カウンターの下から印刷物を取り出して、1枚を結花の前に置き、1枚を手に取って読み始めた。
昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、 大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ。女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。
「マスター、待って! 短編小説って、日本の昔話のこと?」
叶恵が声をかけた。
「そうです。古典です。短編小説は昔からあるのです」
「そうなの。私にも見せて下さる?」
「いいですとも! さあ、どうぞ」
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