8人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は慌てて物体X≪えっくす≫を回収すると、口の中に押し込んだ。
「興奮すると出ちゃうんですよねぇ」
照れ臭そうにはにかみながら、ごくりと喉を鳴らしてXを嚥下する。
飲んじゃった!
謎の物体を飲んじゃったよ!
ボールペンを握る手が、カタカタと震え始めた。
背中にどっと、嫌な汗が噴き出して来る。
限界だった。
私は震える手で紙面にペンを走らせた。
『奇行癖あり』
備考欄にミミズののたくったような字で、辛うじてその言葉を刻む。
この相談者を許容出来る女性が、果たしてこの世界にいるのだろうか。
私は乾いた笑みを貼付けて、遠くを見遣った。
アハハウフフ……。
仕事辞めてぇ。
最初のコメントを投稿しよう!