確信犯じゃない

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恐くて後ろを振り向く事ができなかった。 きっと己一は私が通話を終えるのを待っている。 早く私の誕生日を祝いたくて、自分を差し置いて電話に出てしまった私に苛立ちを覚えているはずだ。 「・・・実はね。」 通話を早く終えなければと思う反面、このまま電話を切らずに彼と話していたいと思う自分もいる。 自分の近況を伝えながら、私は背中に突き刺さる冷たい視線に必死に耐えていた。 なかなか電話を切ろうとしない私に向けられる己一の視線。 棘のある視線を痛い程感じているはずなのに、私の口からは饒舌に言葉が飛び出してくる。
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