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「結衣…
おい結衣、起きろ(怒)。」
「ん…?
辰兄…?」
「もう朝だ。
…にしてもかなりうなされたぞ。
悪夢でも見たのか?」
「悪夢…て言うよりあの人と居た頃だった夢…
最後は父さんと母さんが死ぬ夢をみたの…」
「…また奴らが夢に出たのか…」
おはようございます。
私は市村鉄之助こと市村結衣。
両親が殺されてから一年、兄の市
村辰之助と暮らす毎日。
まさか今日、私の選ぶ道が修羅の道であったのをまだ知る由も無かったのだった。
「新撰組に入隊!?」
「人の話くらい最後まで聞け…」
「でも新撰組隊士に…」
「そう言えば聞こえは良いが…
隊士とはいえ俺は戦いに関係ない勘定方(会計)だからさ、お前がどうしても入りたいなら俺と同じ勘定方になればいい」
「私は父さんと母さんの仇が打ちたいの。
勘定方だったら戦わせてもらえないよ…」
「今の時代の流れをお前も分かってるだろ。」
黒船来航以来、水戸を始めに尊王を掲げた攘夷派の浪士共が好き勝手に幕府に牙を向け、幕府だけでは手に負えなくなってきたのか、御三家の一つ・会津藩に京都守護の命を下した。
そして京都守護職会津藩主・松平容保公御預かりの新撰組は京都の治安悪さに手を焼かしている。
「…知ってるよ…その位。」
「…でも入隊したがってるお前には悪いかもしんねぇが…
俺はお前が新撰組に断られ続けたのは当たり前。
今のお前じゃ…
奴には叶わないだろ…」
「そ…そんな事ない!!
そういう辰兄は戦いもしない勘定方なのに!!
あの事件の事どうだって良いの!?」
「………」
確かに結衣の言い分は間違ってはいない。
昨年両親を目の前で斬殺されている。
彼女としては、仇を打ちたい筈。
なのに辰之助はその事に関しては何も触れないのだ。
「俺が新撰組に入隊する理由は…
生きていく為に働いて金を手に入れてお前を普通の女として生かしてやる為だけだ。
そうじゃないなら
誰があんな殺人集団なんかに組するか… 」
「辰…兄…?」
そう淡々と話す辰之助の表情は冷たいものだった。
「結衣…
お前だって新撰組がどんな職なのか…どういう場所なのか嫌ほど分かるだろ。」
「………」
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