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ピリピリとした空気が頂点に達しようとしたところで志村さんがしゃべりだす。
「狭山さんあなたが知る限り伊田芽麻友さんを恨んでる人や、よく思っていなかった知り合いがいましたら、お聞きしたいのですが、教えていただけないでしょうか?」
僕は少しだけ考え頭のなかに直ぐ浮かんだただ一人の人物を応えることにした。
「僕の知る限り、伊田芽のことをよく思っていなかった人はたくさんました。
ただ僕が知る限り恨んでいるかもしれない人間は、安達海だけです。」
「そうですか…」
僕はその後もいくつかの質問に答え、空気の重いまま時間はすぎていった。話しにひと段落がつくと立ち上がり。
「ご協力ありがとうございました。では私たちはこれで失礼します」と志村さんが玄関へ向かう。
「コーヒーごちそう様でした」と一口もコーヒーを飲まなかった加藤も玄関へむかっていった。
僕も玄関へ向い、「伊田芽さんが見つかったら教えてください」とだけ伝えると、「わかりました、私たちも捜査に全力を尽くします、それでは失礼します。」 そう言い残し二人は僕の家から出ていった。
僕の気が少しゆるんだところに、また僕の家のドアがノックされドアが少し開けられた。志村さんだ。
「先ほどは加藤が申し訳ありませんでした。気分を害されましたよね、これ私の連絡先なので何か思い出したり、わかったことがあったら連絡をしてください。」
「…わかりました」
わざわざそんな事でもう一度謝りにくるとは警察にしては良い人だと思ったのだが、志村さんが言いたかったことは次の言葉であった。
「あ、あと聞き忘れたことが一つありました。狭山さん、伊田芽麻友さんの事を一番怨んでいる人間は誰だと思いますか?」
「……さあ、検討もつかないです」
「…そうですか、では失礼します。」
志村さんはそう言い残し去っていった。たぶん志村さんもわかっていたに違いない、僕はその場に座り一息ついた。
僕の知る限り伊田芽麻友を一番怨んでいる人間はこの僕だ。
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