第1話 彼の笑顔

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 わたし、瀧澤琴音(タキザワコトネ)は恋をしました。  高校2年の夏。    補習授業でクーラーも無い教室で彼に出会った。  ――出会ったと言うよりは、発見したに近い。  わたしは授業に集中出来なくてぼんやりと外を眺めていた。  先生の声は右から左に流れて、ラジオか音楽でも聞いている状態。  「暑い、さっさと帰りたい。」と小声で呟いた。  そんな時、転機が訪れた。 「すいません!! 遅れましたっ!」 「はぁー」  勢いよく教室に入って来たのは一人の男子生徒。  制服は急いでいたのかよれよれでネクタイも曲がっている。  その時は「遅刻か」としか思っていなかった。 「すいません。ちょっと目覚ましの設定が……これでも急いだほうなんすよ! 超ダッシュしたんで!」  遅刻の理由を必死に説明して罰を軽くしようとしているみたいだ。 「ああ……」
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