第1話 彼の笑顔

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 お礼を言うと満面の笑みを向けられた。 「え、ええ」  目が離せなかった。  わたしはその笑みに一瞬で魅かれた。  一目惚れをした。  生まれて初めて好きになった。  心臓が大きく跳ねる。  五月蠅いぐらいドキドキする。  息をするのを数秒ほど忘れていたと思う。    キーンコーン チャイムの音で我に返った。 「では、今日はこれで終わりです。明日テストを行います。その成績によっては補習が終わる生徒もいれば、あと数日かかる生徒も出るでしょう。気を引き締めて臨んで下さい」  授業の方も終わっている。 「後、絶対に遅刻はしないように。くれぐれも注意してください。以上」  先生は坂本君に念を押すように顔を向けて話している。 「あはは……気を付けまーす」  情けない声を出すと教室中で笑い声が広がった。
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