第1話 彼の笑顔

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 その中でわたしだけは笑っていなかった。  只々、頬の熱を冷ますのに必死になっていた。  授業が終わって早々に友人のめいがやって来た。 「あれ? 琴音、顔赤くない?」 「だ、大丈夫だよ! ほ、ほら。今日って暑いからさ。あー暑い暑い」  案の定、顔が真っ赤な事を尋ねられた。  今日の気温が高くて良かったと思ったのは初めてだ。  手でパタパタと仰いでみるが、それほど涼しくない。  だが、これでどうにか誤魔化せたよね? 「そっか。確かに今日暑いよね」 「ホントにね。あははは……」  何とか怪しまれずに済んだ。 「それにしても疲れるわ。内容も全然入ってこないし、先生の声は子守歌に聞こえるしさ」 「それは同感」 「更にこの暑さでしょ。クーラー欲しくて仕方ないよ」 「確かに」  わたしたちの学校は県立の進学校だ。  進学にはそこそこ力を入れている。
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