助手席

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 親友の奥さんが亡くなった。  葬式には間に合わなかったが、線香の一本もあげさせて欲しいと思い、俺は親友の家を訪ねた。 「かえって悪かったな、迎えに来させちゃって」 「否、こっちこそ悪かったな、こんな遠くまで」  彼の家は少々奥まった場所にあり、最寄りの駅からでも歩いて30分はかかる。  ちなみにバスは無い。 「乗って」  彼はそう言うと、車のキーを開けた。  彼の押したボタンに答え、車のヘッドライトが光る。  俺が助手席のドアに手を掛けると、 「悪い。後ろでいいか」 と、リアシートを勧められた。  俺は、 「ああ」 と答え、後部座席に座った。  彼も運転席に乗り込みエンジンをかける……と思いきや、いきなり手を伸ばし助手席のシートベルトをカチャリ締めた。  妙な事をするな、と思ったが、その場はあまり気にせずスルーした。
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