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電話を切って、パソコンの電源をオフにしていると、バスルームから旭人が戻った。
「旭人」
南奈の呼びかけに頓着せず、肩にかけたタオルで髪の水分を取りながら、旭人はベッドに腰かけた。
ちらっとした視線は向いても返事が期待できない眼差しだ。
南奈はデスクを離れ、ベッドに近づくと旭人のまえに立った。
「ちゃんと話したいことがあるの。でも、もう少し待ってほしいんだけど」
「いまじゃだめな理由がわからないな」
やはり素っ気ない。
まっすぐに目を注いでくるぶんだけましなのか。
「旭人はわたしに期待するなって云う。わたしも旭人に期待してほしくないから」
「云い訳は一端(イッパシ)だ。それ次第でどうなるんだ?」
「それは……旭人次第」
旭人はひどく顔をしかめた。
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