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「お姉ちゃんたちがあんまりそう云うから、入社式はホント、わたしの社員証あるのかってどきどきだったんだよ。いまだから云うけど」
南奈は口を尖らせてわざとらしく怒ってみせると、春奈はふと宙を見て考えこんだようにして、それから眉をハの字にしてすまなそうにした。
「あー、そっか。ごめーん。悪気あるわけじゃなくて、うらやましいって感心してるだけ。わたしは最初から無理だってあきらめてエントリーもしなかったけど、南奈のそういう積極的なところ、いいなって思ってる」
「おれはエントリーしたけど、三次落ちだし。南奈は強運の持ち主かもな」
うらやましいとか、強運とか、ふたりに云われるとなんともちぐはぐに聞こえた。
南奈は、康哉のハートをつかんだ春奈がうらやましいし、南奈がいなければ出会わなかったふたりが結婚できたのは“南奈には縁のなかった運命”だ。
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