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4.陶酔のショコラベーゼ
バカげてる。
そんなつぶやきが聞こえたのは気のせいだろうか。
ヒールを履く間も式台に座っているというのに、旭人はつかんだ腕をそのままにして南奈を支えている。
「酔っぱらってますけど、捕まえてなくても暴れませんよぉ」
そう云ってみると疑い深い目が向いて、どうやら旭人が本気で南奈の行いを懸念しているらしいとわかった。
結局、右腕を捕まれたまま店を出た。
すたすたと歩く旭人についていくのはたいへんだ。
転びそうになって、左手で旭人の腕をつかむ。
「まっすぐ歩け」
「歩いてますよぉ」
真剣にそう思って云っているのだが、歩きながら冷ややかな一瞥を投げられた。
けれど、その眼差しはすぐ歪んでいく。
一気飲みしたカクテルが急速に躰を巡って、ひどく酔いがまわっている気がする。
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