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「…子供扱いしないでよ」
「そうだな。悪かった。―――っと」
唇が離れると直後に、沙那の足がふわりと浮いて視線が高くなった。
まるで米袋でも担ぐが如く、星也に抱え上げられてるのだと気付いた沙那は慌てふためく。
デスクワークに従じている割には意外と力持ち、などと感心してる場合ではない。
「何するのっ」
「折角言えたんだ。実践あるのみ、だろ」
実践て。まさかこの間初めて体験した、あの。
すぐに意味を理解した沙那が黙り込む。
この波のように押し寄せる羞恥は、いつまで覚えなければならないのだろう。
一緒にいる限りずっと?
ならばもう、この先一生続いてしまうじゃないか。
「…全然慣れない」
「大丈夫だ」
ベッドに寝かされて呟くと、行為そのものの経験値を指していると捉えた星也からの、優しいキスが降り注ぐ。
相変わらず慣れない。
恥ずかしさに胸が潰されて息が出来なくなってしまいそうだ。
けれど。
慣れないが故に押し寄せる波に身を委ねるのも、案外いいかもしれない。
だってきっと、波の高さはそれだけ彼の事が大好きだっていう証拠のような気がするから。
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