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繋いだ手の男らしさにあやのの胸が高鳴った。
節くれだった長い指は太さがあるため、恋人繋ぎをすると指の間がめいっぱい開かれて、実のところ関節が少々疲れたりもする。
だけどそれは、彼を感じている証のような気がするから苦痛じゃない。
寧ろもっと味わっていたいような、甘さ。
だが流石に車に乗るのに恋人繋ぎの継続は憚られて、あやのは名残惜しげに保志沢の手を離した。
「どうぞ」と玄関扉のオートロックを解錠した保志沢に促されて、あやのは彼の自宅に足を踏み入れた。
春の訪れは間もなくだが、深夜を回ってようやく人気を迎えた玄関フロアは意外と冷えている。
気温的にはもうしばらくブーツが活躍しそうだ。
あやのは今日も足元を飾っていたそのブーツを脱ぐべく手を掛けた。
が、噛んでしまったらしく、左足の方だけちっともファスナーが下に進まない。
玄関でもたもたしているあやのの元へ、先に部屋に上がった保志沢が引き返して来た。
「何してるの」
「引っ掛かっちゃって…タイトな靴だからファスナー下りないと脱げなくて」
「見せて」
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