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タタタタタ…とリズミカルにまな板の上を踊る包丁に、瀬名の目は思わず釘付けとなっていた。
「わ、凄い。さすがです」
玉ねぎの成分で少し潤んだ瞳で、見事な包丁捌きをまじまじと見つめる。
「基礎中の基礎だよ」と、みじん切りを披露した水上は柔らかく微笑んだ。
珍しく瀬名と水上の休日がかち合った日の正午前。
しかしあいにくの空模様で外出は憚られ、だったら一緒に昼御飯を作ろうかという手筈となり、今二人が肩を並べて立っているのは水上の自宅のキッチンだ。
「いいなぁ、私もそういう風に格好良くやってみたいです」
「瀬名は料理しない方でもないでしょ?妹さんと交代制で自炊してるって言ってたし」
「うーん、そうなんですけど結構自己流なんですよね…」
答えた瀬名は、水上から受け取った残りの玉ねぎ半玉をぎこちなく刻んだ。
「あ、瀬名。横からも切り込みいれなきゃ」
え、と戸惑う彼女の背後から、体が包み込まれるように水上の両腕が伸びる。
「こう」
玉ねぎを支える左手と包丁を握る右手それぞれに、水上の同じ手が添えられる。
「最初は縦に切るでしょ。そしたら半回転させて横から。最後にもう一度縦」
瀬名にも分かるようにという心配りか、重ねられた手がゆっくりと動く。
耳元では低い声音の囁きが響く。
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