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彼女が自分を好きでいてくれる事にあぐらをかいて三年も待たせた。
泥酔の度にうわ言のように放った「好き」に慢心し続けた。
今も、体が繋がる度にあやのは呟く。
だが同じ轍を踏む訳にはいかない。
いや、踏もうと思っても今の自分では踏めないだろう。
今宵の悪夢のように、いつか別れを切り出されたらと怯えるようになってしまったのだから。
保志沢はふいに、毛布から飛び出ているあやのの左手を取った。
仕事に差し支えない程度にピンク色のジェルネイルやストーンが施された、細くしなやかな女性らしい指だ。
薬指に、銀の輪はまだ無い。
「…もう待たせたりしないから。もうすぐだから。
その時には、絶対にきちんと言わせて」
固い誓いを胸に、保志沢はあやのの薬指にそっと口付けた。
そのまま互いの指を絡めた拳を毛布の中へ移動させて、完成した恋人繋ぎのまま再び眠りに就いた。
fin.
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