312人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
調理は滞りなく、炒めた玉ねぎと挽き肉、じゃがいものピューレ、チーズとグラタン皿に順に敷かれていく。
「よし。あとはオーブンで焼くだけでアッシパルマンティエの完成。
焼き時間は15分くらいかな。その間何作ろうか」
「サ、サラダとかスープとかデザートでしょうか…」
首を傾げて尋ねる水上に、調理器具を洗い始めた瀬名はどぎまぎと答えた。
「はは、泡ついてる」
水上の視線が自分の顔に向いているのに気が付く。
手が泡で塞がっているため、二の腕で頬を拭おうとすると、
「こっち」
拭ったのとは反対の右側の頬に水上の指が添えられた。
ドキリ、とまた心音が跳ねる。
「あ、りがとうございます」
何とか平静を装うも、水上の優しい眼差しが真っ直ぐと射るようなものに変わった。
頬に触れた指は滑るように瀬名のこめかみをなぞる。
常は下ろされている黒髪は、今は料理中とあってサテン生地のシュシュで一つに括られている。
「髪縛ってるのも可愛いね」
そう囁くや否や、水上は瀬名の体を腕の中に閉じ込めた。
「まっ、待って鷹洋さ…手が…っ」
泡だらけだ。
彼の背に回すのは憚られ、どうしようも出来ない両腕はだらんと下ろすほかない。
最初のコメントを投稿しよう!