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「明日の朝ご飯どうする?お姉ちゃん」
問われて顔を上げた相手の眉間に皺が刻まれて、沙那はバツの悪そうな表情を浮かべた。
意識の上では、尋ねたのは『お姉ちゃん』ではなかった。
「俺はいつお前と血縁関係になって性別が変わったんだ」
「違っ…言い間違えたの!いつもの癖で!」
「あぁ、たまにいたよな。小学校とかで担任の先生をお母さんって呼んじゃった奴。癖なら仕方ないな」
読んでいたバイク雑誌をテーブルに置いて、眼鏡のフレームの中央を中指で押し上げる星也。
からかわれた沙那はむうっと頬を膨らませた。
夕飯が済んでお腹いっぱいで気が緩んで、つい。
ペンタブで絵を描きながらだったから、つい。
大体、二人とも名前が『せ』で始まるから紛らわしいのよ。
彼氏も姉も常は下の名で呼んでいないのに、かこつけた言い分を尖った唇に乗せる。
「でも、その微笑ましい癖は直さないとな。
『アンタ』はまだいいとして、最中に『お姉ちゃん』を出されたらさすがに萎える」
口角を上げながらの星也がにじり寄った。
沙那の手に握られていた液晶タブレット用のペンが、ぽとりと落ちて床に転がった。
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