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穴が怖い。 見られている。 『あなたに助けてもらいたかったのに』 長い黒髪、白いスカートが揺れる。 『助けてくれるって言ったのに』 見ないでくれ、もう外に出られたじゃないか。 あんな大勢の人に助けてもらったじゃないか。 左目にジッポを当てられて、眼帯をした女が穴から見ている。 穴という穴を塞ぐ。 鍵穴を塞ぎ、シャワーや蛇口やコンセントまでも塞いだ。 それなのに。 『嘘つき』 どんな穴からでも、彼女は俺を見る。 逃れたくても逃れられない。 そして今俺は 恐怖から逃れようと 組み敷いた女の 目と 鼻と 口を 渾身の力で塞いでいる。 Fin
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