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「ね、この部屋ちょっと変じゃない?」
情事の後の余韻を楽しむでもなく、くるりとうつ伏せになって白い背中を晒しながら女は言った。
「変って?」
「ん~、なんだか気味が悪い」
二階の角部屋。
駐車場は無料で二台付。
築年数は20年だが、メンテナンスがしっかりされているのか、比較的綺麗だ。
家賃も悪くない。
2LDKのこの部屋は、独り暮らしには贅沢なくらいだ。
周りには深夜営業のスーパーもある。
「例えばどんな風に?」
「はっきり感じる訳じゃないけど。
なーんかどっかから見られてる気がするんだよね」
女はうつ伏せのままタバコを燻らせる。
常夜灯に白い尻が丸く浮かび上がっている。
「ふうん……」
女も同じことを感じているようだ。
「ねえ、うちで一緒に住もうよ」
また始まった。
可もなく不可もなくだったので何となく付き合い始めたこの女は、最近事あるごとに同棲を迫る。
なんだ、適当な理由付けかよ。
めんどくせえ。
「でもいい部屋なんだよな、ここ」
「まあねえ」
さらりと交わすと、女は渋々納得する振りをした。
実際問題、敷金礼金だってバカにならない。
会社からも程近いし、条件的に最高のこの物件を誰かに明け渡すのは悔しい。
なにより、この女のところに行くつもりはない。
「大丈夫だろ、なんならお祓いでもしてもらうさ」
心にもないことを言って女に背を向け、タオルケットを被った。
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