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「まいったな、こりゃ。」
薬師寺が自嘲気味に呟く。
雨の中、逃げ回るのも限界がある。
自分を罠にハメた相手くらい、大概見当はついていた。
しかし、今は復讐どころかまずは自分の命だ。
そんな彼の前に停まる一台の車。
開いた後部座席から話しかけられる。
「やあ。君をスカウトに来たんだけどね。ついでに、命の恩人になってもいいよ?」
父親に呼び出されて、菅野はその勤め先へ。
勤め先とは言っても、個人の邸宅だ。
秘書の傍ら執事業の一端を兼任しているとは聞いていたが、彼が寸前まで勤めていた雇い主宅が可愛く思えるような規模。
その応接室で、父親の雇い主が彼の履歴書を読み直していた。
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