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「てえのが、俺の過去です。後味のいいもんじゃなくて申し訳ない。」
夕食後のダイニングルームで、シンさんが自分の話をした。
シングルマザーであった母親のこと、その母親からの愛情に飢えて反発していたこと、真実を知ったときには遅かったこと、そしてそのまま堕ちたこと。
定職につかず、喧嘩屋のようなことをして、金を稼いできた。
自分を許さず、母親に乱暴をして人生を狂わせた男たちと同じような真っ当ではないものたちを憎み、拳を振るう。
それだけの人生だった。
そんなことしかしてこなかった人生だった。
シンさんは、テーブルの上で組んだ自分の手の指を見つめたまま、目を上げない。
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