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ある時は所謂使い走りみたいな事をやらされた。とある店で指定されたものを買って来いとの事だ。
その間ずっと、グループの一人が付いて回っていたのが気になっていたが。まぁ普段の苛めに比べれば幾分ましな方だった。さっと行って、命令通りに買い物をすればいい。金は全て自分持ちだが、それはいちいち気にするべき事ではない。何も考えず、ただ言い付けられた事だけをしよう、そう思った。
…………少年はその時も、いかに自分が甘憎かを思い知らされたものだ。
店に着いて、目当ての商品を手に取ったその瞬間、パシャリという音と強烈なフラッシュが背後から迸った。直ぐに後ろを振り返ると、誰もそこにはいなかった。
数日後、普通に登校した少年はいきなり教師から呼び出しを受けた。彼が手にしていたのは一枚の写真。キャプションには恐らく筆跡から誰が書いたそれかばれない様に細工したのであろう、わざとらしい下手糞な字で『万引きの瞬間を激写』。
米田憲太郎という自分の名前と住所まで、そこにはっきりと書かれていた。
とことん、後悔した。なぜ自分はただの使い走りに、グループの一人が付いて回っていた理由を計算に入れなかったのだろうか。
その殆どを教師からの厳しい取調べに費やしたあの日、少年は劣等生に加えて不良のレッテルまでもベッタリと貼り付けられ、当然それに伴い苛めは益々酷くなった。
奴等はあの写真を大量に焼き増しして近所に貼って回っていたのだろう、あろう事か自分の家の周りの人からも後ろ指を差されるようになった。家の中にも外にも、少年の居場所はなくなりかけていた。
反面、彼を苛めていた不良達は少年の偽りの悪事を透破抜いた英雄として、校内外で高く賞賛されたのだ。
当然、そんな目に遭えば、教師やら何やらに訴えるのは自然な事だ。一応その場では善処すると教師は言った。これで苛めもいくらか収まるだろうと、少年は安堵した。
だが……それも全ては糠喜び。少年を待っていたのは更に過酷な仕打ちと、何よりもつらい教師の裏切り。
それはとある体育の授業の時だった。その日の授業はサッカーで、勿論少年もジャージを着てグラウンドの上にいた。
教師が到着すると少年は一番に彼の前に引っ立てられ、すぐさまゴールポストにロープでぐるぐる巻きに固定されてしまった。突然の出来事に少年が目を白黒させる中、教師は叫ぶ。
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