第1章

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僕は、野良猫のドム。 背のみじかい黒毛の若い猫です。 脚は、白いソックをはいたように白い。 僕は、野良猫仲間と、くらしている。 僕達の棲みかは基本的に 田園都市線つくし野駅から人間の足で10分ぐらいのところにある。街路樹に、囲まれた十字路の角に立つ 二階建ての賃貸マンションの駐車場だ。 そこに常時停めてある白塗りの古いワゴン車の下で、仲間の野良猫とくらしている。 今は、秋の日も落ち、夕方だ。茜雲に染まる、丹沢山塊は、猫でも、感動的だ。そろそろ、僕たち、野良猫の、面倒をみてくれる103号室の住人!ガスおばさんが、近所のスパーの、バイトを、終えて帰ってくる時間だ。 僕は、ブロック塀の上で、毎日ではないが見届けるのが、やくめだ。 この頃は、キャトフードばかりだたから、もしかするとマグロのぶつ切りかも。 カズおばさんの家庭は50近い夫と、男の中学生と、女の小学生の、四人家族だ。 世間では変わり者と、思われている夫は飲食店経営に、破綻して、今は、絵描きの、夢があって、自由時間が、比較的取れる、石焼き芋の販売を、拡声器のついた軽トラックで、田園都市線の、駅を流して生計の、糧にしている。 カズおばさん、は、もう少しまともな職業に就いてもらいたいと、願っているのだが、夫は、聞く耳を持たないようです。 夫は、少し稼ぐと、奥日光だ、ほら、奥入瀬だとか、絵描き仲間から誘われたので、断れない。とかいっては、出掛けてしまうのです 。だから、暮らしていくのは、大変なのです。 カズおばさんは、とんでもない男と結婚したものだと、猫仲間でも、同情しきり。 なぜ、僕がそんな家庭の、事情をしっているかって? 実を言うと、ほくだけが、カズおばさの許可を得ていて、この、家庭の出入りが自由なんだ。 なんでかわからないが、多分、白い短い足がが、魅力なのかも。なんちゃって。 そのせいで、家庭の、会話は、手に取るようにわかるのです。 ぼくは、1階で、ひたいほどの、小さな庭付き3dkの、狭い部屋の、かたすみで、テレビをみたり、いねむりしながら、会話を聴いているのさ。 ときおり、夫婦喧嘩で、やむ無く外に逃げ出すこともありますよ。 外にでるには、風呂場の窓が、僕のために解放してくれた出入口なのだ。
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