第1章

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また、もぞもぞと動き出してベッドヘッドに凭れる格好をした。 布団も引き寄せて、枕を膝の上に乗せる。 『んー…今日だよぉ…』 私が中学校を入学する日。 ダディは今、パリに出張中。 ……出張中って言うか何て言うか。 ダディはモデルなんかをしていて、しょっちゅう家を空けているわ。 それと、たまに俳優? この日本でも、一応有名らしいけど、私の父親とはまだ学校にはバレてないの。 ダディは私の入学式に来たかったみたいだけどね。 だから、電話をしてきた。 早すぎる時間に…。 入学式に来れないことに泣き、私に会えないことに泣いて。 お父さんに会えないことに嘆いて、私に泣き………付かれてもどうもできないわ。 『仕方ないわ………お仕事なんですもの』 30歳になったダディは父親感はあまりない。 可愛い弟って感じかしら? 『ダディ、ダメよ。ちゃんとお仕事してこなくちゃ、お父さんに嫌われちゃうから』 私がこう言ったら、電話の向こうで声を詰まらせる。 『……お父さんが出席してくれるから、お父さんと一緒に写ったメールを送るから我慢して』
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