第1章

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ある漫画で“美父”って表現があったけど、正しく、お父さんのことだわ。 でも、少し残念なことが……。 それは。 「ジャージ……お父さん…ジャージ持ってた事に驚きよ」 普段はシャツとパンツのラフな格好かお仕事の制服かしか見ないから。 「新鮮なのは新鮮だけど…似合わないね」 私はライトな青色をしたジャージを上から下、と眺めた。 「……」 お父さんが自分の姿を見下ろして、首を傾げる。 お父さんって、ファッションに興味はないみたい。 動きやすさが第一で、肌触りが第二かしらね? 「ふふっ」 この12年生きてきて、ダディみたいにはいかないけど、お父さんの表情もわかるわ。 ダディもいつだったか、お父さんに対して嘆いてたことがあったっけ。 「あ!今からシャワー浴びてくるね!ダディから伝言『愛してる』って」 お父さんの稀に見る驚く顔を背にした。 「直接言いなさいよ!って感じぃ」 お父さんはダディの言動だけに可愛い反応を示すわ。 綺麗でカッコ良くて、可愛くて。 なのに――――自分の魅力に気付くことがないって。 私は2階のバスルームへ直行した。 私も恋がしたい。
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