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「…今年もこの季節か……………。
そして、この木ともお別れなんだな………。」
今年、取り壊される事になった母校の小学校。
そして、
そんなこととは「関係ないよ。」と言いたげな
満開の花をつけた「桃の木」…。
もう、村では建物の維持管理が出来なくなり、
民間に競売し『福祉介護施設』への
建て替えをするそうだ。
私も「地域のためには仕方ないよな、
高齢者の福祉介護に使うのなら…。」と
賛成した…………はずだった。
…土地を一旦整理するために、
この学校の創設記念に植えられた
「桃の木」まで切る事になるまでは…。
この学校と共に何年も子供たちを見守り続け
四季の移ろいを感じさせてくれたこの木も、
もうすぐ無くなってしまうのだ……。
…小一時間ほど経った頃、
校門から聞こえて来たのは
騒がしくも懐かしい学友達の声。
「約束の日、来ちまったなぁ…。」
「ああ、とうとうな…。
って、アイツもう来てたみたいだぞ。」
「おーい、一人だけ先走るんじゃね~よ。」
………………。
みんな覚えていてくれたんだな…。
随分昔の…あの約束を…。
「クラスのみんなで、あの桃の木の下で花見しよう!
あの木とクラス全員が別れる時にさ。」
ここに俺一人、家を継ぐために残り
みんなと結んだ、あの約束を…。
「あぁ…、みんな…覚えていてくれたんだな…。」
「当たり前だろ。」
「忘れる訳無いっての。」
「今まで、この木の事忘れた日は無いよ。」
「そういや、これまでオマエが
世話してたんだっけな。
すまん、オマエだけに押し付けちまって…。」
「…いいよ、俺一人残れたんだから(笑)」
そう言いつつ、俺は何枚かの写真を取り出す。
「それに…これを見てくれよ。」
「………え!?……まさか、これって……。」
「嘘だろ…」
「こんな事って…」
「…本当にこれが…」
…みんなが驚くのを聴きつつ、
俺は木を見上げる。
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