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「…いや、ダメだ。」
「俺たちにオマエを逝かせる事は出来ないよ…」
「…あの時もそうだった。」
「そうだ。
みんな、ここに残してきた
家族、友、そして故郷の為に戦ったんだ。
国の為なんかじゃないぞ。」
「そんな俺たちにオマエを逝かせられる訳
無いじゃないか。」
…その言葉を聞き
何も言えなくなった俺に
みんなは、
「そうだった…オマエに一つ、頼みたい事が有ったんだ。」
「『この世にいない』俺たちから
『この世に生きる』オマエにしか
託せない願いが。」
「オマエに出来るだけで良いから
『次の世代』へ
『この木』、『その子供』、
『昔、戦争で体験した事や悲劇』を
伝えてくれよ。」
「ああ。
そうすりゃオマエが本当に天寿迎えた時、
連れてってやるよ(笑)」
…みんなのそんな言葉に…
『生きている事』の
本当の意味を知った気がした…
「…わかった。
必ず生きれる間、そう『活きる』よ。
…だから約束してくれ。
俺が『逝く時』、
また『この木の子供たち』の下で
再会の花見をするって。」
「ああ、約束だ。」
「オマエも忘れるなよ?」
「俺たちは『忘れようがない』けど
オマエ、『ボケ』ないようにな。」
………………そう言い残し、みんなの姿が消えた後、
桃の木の花の間から
朝日のやわらかい光と
花びらを纏った春風が吹き抜けて行く…
「…約束だ…。」
そう呟き、
老人は未来へ歩き出す…。
『過去の過ちや出来事の記憶』と共に…………。
ー完ー
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