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その黒猫、撫でられることは、苦手だった。
優しく構ってもらえるのは嬉しいけれど、近付かれ過ぎると、離れてしまいたくなる。
うっとり見惚れて目映く、眉間を寄せたくなる程の艶めく毛並み、そして身のこなしをどんなに褒められても、心には、届かなかった。
ずっと、孤独に生きてきた。
餌をくれる、自分を好いてくれる人間にさえ、頼るなんてもちろん、擦り寄ることすら満足にできなかった。
黒猫は一つ、伸びをする。
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