スペードの3 ①

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 それを聞いて、目の前の女の子は、拘束されている首を必死に動かそうとしていた。目からはもう涙が溢れ出し、必死で口をもごもごと動かしている。 『勝負は十回勝負! あいこでも一回とカウントしマス! つまり、十回あいこだったら互いに指を失う事なく、ゲーム終了! 引き分けとなりマス!』  だったら、あいこ十回を狙えばいいのか?  そんなに甘いゲームを、こんな状況を作り出した狂人が考える筈もない。 『おっと、ここで補足説明デス! 実際ルールはこれくらいデスが、いくつか守るべきルールを設けマス!』  JOKERは楽しげに首を振る。 『ひとつ、勝者はセカンドステージへと進み、敗者は即刻デストロイ』  JOKERがくすりと笑った。 『つまり、死んで貰いマス』  だろうな、とは思った。  命懸けだとJOKERも言っていた。  指を失うだけで済む筈がない。  しかし、次の言葉は思いも寄らぬものだった。 『あ、あと引き分けの場合は互いにセカンドゲームには進めまセン! 脱落という事で、このままお帰り頂きマス!』  正直予想外だった。  何故なら、JOKERの言葉はこういうことを意味しているからだ。  二人であいこを出し続ければ、二人とも無事解放。  ここまでやっておいて、無事に助かる道を、みすみす見逃す道を用意している。  逆に不気味だった。  その光明の裏に、何かがあると疑わざるを得なかった。 『ちなみに、どの手で勝っても入るポイントは1! あいこや負けは0ポイント! 十戦終えての総ポイントで勝敗決定デス!』  グリコジャンケンからルール拝借というのは、「指切り」のペナルティについてのみらしい。しかしそれに何の意味があるのか。  薄々理解はできている。  続くルールは思わぬものだった。 『そしてふたつ。一回戦ごとの「指切り」は、対戦プレイヤー自身が行いマス』  くらっとした。  じゃんけんで勝てば、指を切る。  それをプレイヤー自身がやれ、というのか。  人の指をハサミで切る? 人の指を石で潰す?  嫌だ。絶対に嫌に決まってる。  そんな残酷なこと、できる筈がない。
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