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「……何度目ですか、それ。こればっかりはどうしようもないですって」
ようやく放してくれた紙には赤字の三桁の数字が並んでた。
あぁ、また満点取ったのか。
すこぶる他人事のように思えてしまう。
こんな紙切れに意味なんてないんだ、俺にとって満点が通常運転だ。
そして、静かに自席へ戻る。
赤字三桁の紙は紙飛行機にでもしてしまおう。
それが一番有意義な使い道というやつだろう。
そうこうしているうちに、全員分を返し終えたみたいだ。
生徒たちは思い思いに話していた。
そして、それは俺の斜め横の席にいるアイツも例外じゃない。
チラッと肩越しに見ると目が合った。
色素が濃いのか黒い目、黒い髪。
「あはは、また赤点だ。深夜はまた満点?」
「ああ。赤点好きだね」
苦笑いを浮かべて、俺に答案用紙を見せてくる。
いや、物凄い間違えかたしてるなぁ。
これはある意味、才能だと思う。
そんな黒髪の同級生は、軽く目を細め、睨んでくる。
こんな強気なところが女の子らしさに欠けてると思ったりするが口に出したりはしない。
「冗談だって。前を向け前を」
「覚えとけよなぁ深夜」
どうやら俺は何かされるらしい。
部活は行かずに早々帰宅するか。
空気を読むことに長けているであろう学生たちは、次第に静になり、それを見計らったタイミングで教師は声を上げる。
嫌な時間の始まりだ。
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