俺は陰キャラに徹してた

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「うるせー、帰るんだよ、放してくれって」 「え?今日は5月5日だよ?」 それは身構えることない不意打ちで、唐突だった。 『5月5日』その日付が耳に届き、俺は心臓が激しく鼓動する。 痛い、心臓が痛い。 脳に掠めるのは─────妹の顔。笑顔。 「────はッ、はァ……はぁ、ッ」 心臓がどうしようもない痛みを発している感覚に見舞われる。 俺は片手で心臓の位置にある制服を握る。 呼吸が乱れて、視界がホワイトアウトして、頭痛が響いて、身体に力が入らなくなるのを壁に手をついて支える。 「……痛ッ────。考えたくない考えたくない考えたくない」 自分に言い聞かせるように何度も何度も呟く。 そんな自己暗示になんて意味なんてなく。 それでも頭に浮かぶのは、再生されるのは、 あの時の事だった。 思考の海に深く、深く沈んでく。
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