俺は陰キャラに徹してた

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────────それは5年前、小学6年。 いつものように友達と夕刻まで遊び尽くして帰宅した自分は玄関にいた。 リビングに戻ると、妹の深月(みつき)が絵具で絵を描いていて。 それを楽しそうに見守る母親がいて。 『あー、兄ぃおかえり』 『あら深夜君ちょっとみてよコレ、深月の絵が美術館に飾られたのよ』 我もの顔で俺に見せ付けてくるのは深月の絵の写真だった。 満面の笑顔で、俺に見せてくれた。 その写真の中にはピースをしてる我が妹。 たった1つしか歳の違わない俺達をまったく比べない両親には感謝をしていた。 それでも、幼いながらに俺は感じていた、劣等感。 芸術の才能に恵まれ、美術館に飾られるほどの作品を作り、ピアノのコンテストでは全国クラスの実力。 小学生ながらに顔の造形も整っており、取材を受けてた。 両親は『深月に比べて深夜は』なんて比べるような言葉は俺にはくれなかった。 平等にしてくれる言葉のみだった。 それでもわかる、深月に向ける笑顔と俺に向ける笑顔は別物だった。 その実で比べてた。 それで妹が嫌いだとか邪険にしてたわけじゃない。 『おぉ、凄いじゃん深月、おめでとー』 俺の幼い声が響く。
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