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雪のように花びらが舞い散る桜並木を悠然と歩く一人の遊女に、道行く人々の視線が集まる。 足抜けではないと一目で分かるのは側を歩く人物が廓(くるわ)の主人だからだ。大門まで辿り着くと、主人は手に持っていた荷物を遊女に渡した。 「長らくお世話になりました。」 艶やかに微笑み一言発した後、主人の言葉も聞かずに踵を返して歩き出す。 否、走り出した。桜並木の先に見える愛しき者の元へとーー。
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