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「あの、リラさん」
「はい。なんでしょう?」
さっきまでのほのぼのとした雰囲気はなく、真面目な雰囲気が漂う。一体なにを言われるんだろう。少し不安に思いながらユンさんの言葉を待つ。
「……僕は魔力がないので、リラさんの役には立たないかもしれません。でもリラさんのパートナーを誰かに譲る気もありません。だから、これからよろしくお願いします!」
「……」
……あ、どうしよう。今とても泣きそう。悲しいわけじゃない。痛くも辛くもない。ただ、真っ直ぐに伝えられた言葉が……どうしようもないくらい嬉しくて。涙が溢れそうだ。
「……」
とてもとても嬉しくて、今までぽっかりと空いていたところが満たされていく。
ああ、今まで私という魔法使いを必要としてくれたパートナーはいてくれただろうか。
たぶん……いなかったなあ。私は知っている。あの優しかった彼でさえ、私を見る目が冷たいものになっていったことを。
『空を飛べないばかりか、こんなにもどんくさいなんてがっかりだ』
そう陰で言われているところに何度か出くわしたことがある。そのたびに胸はずきりと痛み悲しくなった。
「リラさん。あの僕なにか気に障ることを言ってしまいましたか?」
不安そうな顔で私を見つめるユンさん。
「いいえ。ユンさんは……」
否定しようと声を出したところで、ぼろっと大粒の涙が一粒零れた。
ユンさんが驚いているのを気配で察した私は、心の中でユンさんに謝る。
「ユンさんは悪くないんです。ただ私が一番ほしかった言葉を当たり前のようにくれたのが嬉しくて……」
ああ、私のこの気持ちを伝えたいのに上手く纏まらない。気持ちが高ぶってるせいか余計に言葉が出てこなくて焦ってしまう。それでも伝えたくて言葉を探していると、ユンさんが声をかけてくれた。
「リラさん。僕は貴女に憧れて、貴女の造った魔法石に一目惚れしたんです。だからどうか泣かないで下さい。リラさんには笑顔がとても似合うんです」
そう言って優しく笑う彼に、また満たされる私の心。
……そして昔どこかで会っているような、この懐かしい気持ちはなんだろう。
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