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ゆらゆらと優しさに満たされる心。そして懐かしさを感じる心で、私は記憶にあるはずのユンさんの姿を探した。
……あれ、ユンさんの姿がどこにもない。おかしいな。心ではこんなにも懐かしいと言っているのに。もしかして私の気のせいだったのだろうか。うーん、でもなあ……。
「リラさんリラさん」
「あ、はい!」
「僕に笑った顔を見せてくれませんか?」
爽やかに笑うユンさん。その笑みを見てどくどくと脈打つ心臓。
……ああ、そっか。久しぶりに触れた優しさに、私は勘違いをしてしまったんだ。もちろん友人たちは優しい。でも本当に初対面でここまで優しくされたのは久しぶりだ。そうかそうかと妙に納得する自分がいる。すっきりとした気分に頬が綻んだ。
「やっぱり素敵な笑顔ですね」
愛おしそうに私を見つめる翡翠色の瞳は、優しく細められている。
「リラさん。笑顔をありがとうございます」
言われたから笑顔にしたわけではなく、自然になっていた笑顔にお礼を言われ思わず照れてしまう。
「うえ、あ、えっと、あああああの……」
うわ、うわわわ、どうしよう。何て言えばいいのか。照れて言葉が出てこない。それにむしろお礼を言いたいのは私のほうだ。
「あ、あの! 私もありがとうございます! パートナーになってくれて……本当に嬉しくて感謝してもしきれません」
よし、言いきったぞ。滅多に言わないようなことだから、ちょっと声が上擦ったけど最後まで言えた。
「ユンさん! これから二人で楽しく頑張りましょう!」
にへーと締まりなく笑ってユンさんに手を出すと、ユンさんも手を出してくれて。その手を両手で握る。するとユンさんも優しく握り返してくれた。
ああ、この人に出逢えてよかった。
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