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「ユンさん。すみませんがあれを取ってください」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「いえ。あ、これはどこに置けばいいですか?」
「それはこっちにお願いします」
昨日のてんてこ舞いが嘘みたいに、今日は仕事がはかどってる。
やっぱりパートナーがいるのといないのとでは違うんだな。それに以心伝心のごとく私が言ったことをすぐに理解してくれるユンさんに、とっても感謝してる。
……それにしても、今日はお客さんが少ない気がする。いつもこの時間はお客さんで賑わってるのに。
「なにか、大切な仕事が入りそうな……」
そんな気がする。まあ、入らないかもしれないけど。
「いきなりどうしたんですか?」
「いえ、お店がこんなに静かな時は大切な仕事が入る確率が高いんですよ。だから今日も入りそうだなって思いまして」
そう言えば前回はなにを作ったんだっけ。
うーん……あ、そうだ。前回は結婚する娘さんに贈る髪飾りで、その前がペアリングを作ったんだ。そうだそうだ。そうだった。そして受け取った人が幸せになれるようにと願って、魔法石を仕上げに使って。
あ……そう言えば予備の魔法石がこの間なくなったな。パートナーの事を考えすぎていて、すっかり忘れていた。あと造り途中のも仕上げなきゃ。
「よし、これで終わりっと」
最後に展示用の魔法石を棚に置く。
よし。品物は整頓し終わったし、工房にこもらせてもらおうかな。
「あの、ユンさん」
「はい、なんですか?」
「すみませんが、私ちょっと工房にこもってきます。なにかあったら呼んでください」
「はい、わかりました。任せて下さい」
「よろしくお願いします」
ユンさんに軽く頭を下げてから、私は工房に向かった。
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