2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
雨がパラパラと降っている。
傘を忘れた俺は、商店街の古本屋の前で雨宿りを決め込む。
店のガラスを背にして街中を眺めていると、皆もふいに降って来た雨に戸惑う様に足早に歩いていた。
綺麗なスカートを足に纏わせながら、女性が走っていく。
俺の好みの長い髪。
ストレートで背中まである髪は、残念ながらパーマのかけ過ぎなのか艶がない。
もっときちんと手入れをすれば、美しいだろうに。
そこまで考えて、俺は肩を竦める。
俺の彼女でもないのに、余計なお世話だろう。
大体、俺は生まれてからこの方、女性とお付き合いした事なんてないんだ。
通りすがりの女性をこうやって眺めるだけだって、多少テレがあって。正面切って見つめるだなんて、そんな勇気もないのは自分で分かっている。
憧れはあるさ。
俺だって男として生まれたからには、いつかは彼女を作って恋人になって。
人生を謳歌してみたい。
そこまで考えてから、俺は苦笑いを浮かべて、足元に出来た水たまりに目を落とす。
此処まで生きて来て、誰一人、俺の彼女にはなってくれなかった。
それどころか、誰からも好きと告白された事もない。
俺からも、気になる女性に、ついぞ告白をしたことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!